インタラクション・デザイン研究会 参加の感想

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これに参加してきましたので、感想をまとめます。

先ず良かったことは、
「日本のインタラクションデザイン」なんていう大上段のテーマを、30そこそこの若い研究者二人が、トピックとして取り上げたこと。
これは、おそらく日本の電気電子関連企業の近年の不振に起因していると思う。彼らが、これに危機意識をもっていることは、とても良い事だと思うし、励まされた。
彼らが、公金で研究をしている研究者だという点が、評価できる。やっと彼らに届いたか、というのが私の実感。2008年に、情報処理学会などに参加している大手企業の研究者がリストラされて、アイティアに「複数」履歴書を送ってきたショックを思い出す。この危機意識を実感できない人は、その後研究者がどうなったかを、わが身のこととして考えたほうがよい。

もはや、電気電子ハードウェアは台湾、韓国などの攻勢でジリ貧だ。パッケージソフトウェアはそもそも会社がない。ネットサービスは、SNSがまだ耐えているが、Facebookの脅威はリアルになりつつある。SIはそのうちクラウドがこなれてきて、ITドカタは不要になるだろう。さらに言えば、「インタラクション・デザイン」と看板を掲げる、デザイン会社やコンサル会社は、事業でないことにも留意したい。

すくなくとも、この会の中で、主催者の坂本くん、渡邊さんが、漠然とこういう危機意識を持っているということが、同世代の私にとって一種の「励まし」になった。

悪かった点は、パネラーの人選だと思う。
個別の登壇者は、私も大好きな研究者・クリエータだ。しかし、彼らが集まったところで、すばらしいインタラクションの「製品」が世の中に出て行くとは、思えない。
参加者も、登壇者をfollowする作り手の側の人間が多かったように思えた。作り手同士が集まったところで、学びあい励ましあうことはできるが、製品にはならない。僕らが、真っ先にやらないといけないのは、ビジネス上手なパートナーを探すこと、流通チャンネルを見つけることじゃないだろうか?
TAOとかJSTとか死蔵されている成果はどうなるんだろう?もう、10年先なんてノンビリできる余裕は、企業にあるのかだろうか。
オープンソースにすれば良いという発想も、そのプログラマの糧がどこから来ているのかに注意したい。それが公金なのだとしたら、そのソフトが納税者に貢献しているかも、一瞬は考えてほしいもんだ。卒業生の進路は他人事だと言う情報系の大学教員は、一種の国賊のようなものだ。東大のエリートエンジニアが、NTTデータでドカタをしているのを聞くと、悲しくなる。

最後に余談だか、質疑応答の3番目ぐらいの質問者で、Gree社員となのる参加者が、
「『日本』のインタラクションデザインって、日本であることが重要か?僕は日本なんかにこだわらない」と、よくある質問をしていた。彼は、天才か、あるいは大バカか、どちらかでしかない。
すくなくとも冷静に考えて、外国語をマスターして、就労ビザをとって、外国の商習慣を覚える、なんていうコストを支払うなんて、凡人の私はごめんだ。
猪子さんの指摘どおり、KDDIが海外シェア90%以上のキャリアだったら、僕らは簡単に収益化できるわけで、日本の産業が強いことは、日本国民に有利なのは、小学生でも知っている事実だ。
この指摘に対して彼は、「僕個人の意見であって、会社は分かりません」と答えたけれど、彼の糧が会社から出ているのも、小学生でも知っている事実だと思う。

これはコストの問題であって、ナショナリズムの問題ではない。

中原


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コメント

“インタラクション・デザイン研究会 参加の感想” への0件のフィードバック

  1. のアバター
    匿名

    日本"発"のインタラクションデザインであることが重要ということですね。ただ、日本の携帯電話のようにデザインする段階で顧客を日本人に限定し過ぎてしまうことは、後々世界規模にサービスを敷衍できるかという意味で問題だと思います。
    質問者はその点を指摘したかったのかもしれませんが、まるで「優秀な人間は海外に行けば良い。少なくとも自分は困らない。」というような近視眼的な主張になってしまったことは残念です。

  2. 中原のアバター
    中原

    「優秀な人間は海外に行けば良い。」という主張を他人に話すメリットはないと思います。本当にそうなったら、優秀な他人は外国に納税することになるので。sonyの人がサムスンに転職しまくっているという事実は、一種のチキンレースで、公の場で話す倫理観はどうかと思います。

  3. のアバター
    匿名

    日本においては明らかに研究者やエンジニアの需給バランスが狂っていて、それは供給過剰というよりも、彼らに対して報いる社会制度、企業側の受け皿の不備が問題ということでしょうか。その意味では優秀な人材を国内に留めることのメリットを強く主張できる人、またその意義を訴えかけたい相手(ビジネスパートナーだけでなく政治家も?)の参加があるとより有意義だったかもしれませんね。
    余談ですがGREE絡みのネタでふと思ったんですが、躍進の影には携帯電話でのゲームはこっそりやってても他人にバレにくいというのはあるんでしょうか(笑)会社で休憩中にDSやPSPでガリガリとゲームしてたら怒られそうですが、GREEならば傍目には携帯をいじっているくらいに見られてまだサボり易い気がします。

  4. 中原のアバター
    中原

    私は「企業側の受け皿の不備」には同意しません。私は元々エンジニアで、いまベンチャーやっているんですが、ビジネスに背を向ける研究者が多いですよ。まあ、循環論で、卵が先かにわとりが先か、になりますけど。
    最低限、営業職の人と話をするとか、顧客と話をするとか、リアルな販路を意識したほうが良いと思って行動しています。
    「ユーザ」って曖昧なイメージや「開発者=ユーザ」では、お金儲けにならないと思って行動しています。(まだ売れてないですが、、。)